偏執 | ||
追いかける――――追い求める、姿。 闇夜を駆ける、白い影……。 君は、何のために――――? 間延びした昼下がりの教室、すやすやと気持ち良さそうに眠る君の姿を横目に見ながら、思う。 ――――君は、怪盗キッドなのだろう……? 無邪気な寝顔、屈託のない微笑み。惑わされる。二つの姿。君は一体……? ――――そしてふと、苦笑する。何を馬鹿なことを、と。どちらも君じゃないか、紛れもない、君の一面。 それでも。 皆に向けられるものではなく、演技した姿でもなく、「独り」のときの君の顔を見たいと望むのは…… 可笑しな話だ、と白馬は思う。 まるで恋でもしているかのような―――― 恋?この僕が、彼に恋? まじまじと、見つめる。机に突っ伏し、腕の中に半分以上埋まった顔を。 閉じられた瞳にかかる柔らかな髪の影。平和な寝顔。 何故、知りたい。 何故、求める。 何故――――。 ――――何故あなたは盗むのですか?何のために…… 幾度も脳裏に甦る記憶。 問いかけに、彼は答えなかった。それを捜すのが君の仕事じゃないのか、と、 浮かべられた笑みは自分に対する嘲笑でも挑発でもなく、いっそ楽しげで、だが悲しげな……。 それはすぐに嘲りに似たものへと変わったが、一瞬のその表情、不可解な笑みは、 白馬の心に焼き付いている。 ――――怪盗キッドの正体は黒羽快斗 確信に近い推測を、彼が肯定することは決してないが。 ――――黒羽君…… もう少し、あと少しで手が届きそうな高揚感。 事件を通す度に、一歩、また一歩、君に近づいているという感覚、その喜び。 君をこの手にとらえること、それこそが僕の望み。 君の全て、君の持つ秘密も含めた君自身の全てを――――この手に。 恋かもしれない。ただの執着かもしれない。そんなものですらないかもしれない。 が、君をつかまえなければ、と思う。これは僕の抑え難い欲求。 ――――つかまえてみせますよ。遠からぬ未来に。 いつか……。 知らず、浮かぶ穏やかでない微笑み。 眠る君をいとおしいと思う気持ちは――――……? END |
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